論文要旨
微生物学分野 客員研究員 石川和宏先生の本学臨床検査医学分野との共同研究が Viruses に掲載されました。
題名
A Retrospective Cohort Study on HHV-8 Viral Load and Prognosis in HIV-Associated Kaposi Sarcoma Among People Living with HIV in JapanA Retrospective Cohort Study on HHV-8 Viral Load and Prognosis in HIV-Associated Kaposi Sarcoma Among People Living with HIV in Japan
邦題
日本のHIVとともに生きる人々(PLWHIV)におけるHIV関連カポジ肉腫の予後とHHV-8ウイルス量に関する後ろ向きコホート研究
著者
東京医科大学微生物学分野 客員研究員: 石川和宏(江戸川病院)、
東京医科大学臨床検査医学科 臨床講師 村松崇, 臨床助教:金子竣, 臨床助教:原田侑子, 助教:宮下竜伊, 非常勤医師:上久保淑子, 非常勤医師:山口知子, 助教:一木昭人, 講師:近澤悠志, 助教:備後真登, 非常勤医師:関谷綾子, 准教授:四本美保子,客員准教授:萩原剛, 教授:天野景裕, 主任教授:木内英
掲載ジャーナル
Viruses 2026, 18(2), 161; https://doi.org/10.3390/v18020161
論文要旨
【背景】
日本におけるHIVとともに生きる人々(PLWHIV)に合併するカポジ肉腫(Kaposi sarcoma)の臨床的特徴および予後、ならびにヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)ウイルス量との関連については、十分に明らかにされていない。
【方法】
2000年から2023年までに東京医科大学でカポジ肉腫と診断されたPLWHIVを対象とした後ろ向き研究を実施した。カポジ肉腫症例の臨床像、治療経過、転帰を解析し、一部症例で測定されたHHV-8ウイルス量と予後との関連を検討した。
【結果】
カポジ肉腫症例は70例認められ、そのうち23例でHHV-8ウイルス量の測定が行われていた。診断時の年齢中央値は43歳であり、診断時のHIVウイルス量中央値は150,000 copies/mL、CD4陽性T細胞数中央値は76/µLであった。皮膚病変に加え、消化管、口腔咽頭、気管支・肺などの内臓病変が認められた。
HHV-8ウイルス量中央値は0 copies/10⁶白血球であった。死亡した9例のうち5例はカポジ肉腫炎症性サイトカイン症候群(Kaposi sarcoma inflammatory cytokine syndrome)と診断されていた。年齢50歳以上および高いHHV-8ウイルス量(615 copies/10⁶白血球超)は、生存率低下と有意に関連していた。
【結論】
HHV-8ウイルス量の上昇は、日本のPLWHにおけるカポジ肉腫死亡リスク因子となる可能性が示唆された。特に、本研究でカポジ肉腫炎症性サイトカイン症候群と診断された症例は全例死亡しており、カポジ肉腫炎症性サイトカイン症候群が極めて予後不良な病態であることが改めて示された。
当該論文の臨床ならびに疫学研究へ与えるインパクト
本研究は、日本におけるHIVとともに生きる人々(PLWHIV)を対象として、HIV関連カポジ肉腫の予後とHHV-8ウイルス量との関連を検討した国内初の疫学研究である。長期にわたる後ろ向きコホート解析により、日本の実臨床に即したカポジ肉腫の転帰を明らかにした。特に、HHV-8ウイルス量について死亡リスクを予測するカットオフ値(615 copies/10⁶白血球)を初めて提示し、定量的な予後指標としての有用性を示した点は重要である。さらに、カポジ肉腫炎症性サイトカイン症候群を合併した症例が全例死亡していたことを明らかにし、極めて予後不良な病態であることを日本のPLWHIV集団において初めて示した。本研究は、PLWHIV診療を多数担ってきた東京医科大学というhigh-volumeセンターの臨床基盤を生かした疫学的エビデンスであり、今後のHIV関連カポジ肉腫におけるリスク評価および診療戦略の高度化に貢献する。
