東京医科大学 微生物学分野 - Department of Microbiology, Tokyo Medical University -

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論文要旨

博士課程大学院生 石川和宏先生の論文がAntimicrobial Agents and Chemotherapyに掲載されました。

題名

In Vitro Activity and Clinical Efficacy of Faropenem against Third-Generation Cephalosporin-Resistant Escherichia coli and Klebsiella pneumoniae

邦題

第三世代セファロスポリン耐性大腸菌および肺炎桿菌に対するファロペネムの in vitro 活性と臨床的有効性

著者

東京医科大学微生物学分野 石川和宏

掲載ジャーナル

Antimicrob Agents Chemother. 2022 Jun 1;e0012522. doi: 10.1128/aac.00125-22.

論文要旨

Extended spectrum β-lactamase(ESBL)やAmpC産生腸内細菌科細菌に対して有用な経口抗菌薬は少ないが, ディスク法による感受性試験結果をもとにファロペネム (Faropenem; FRPM)を使用することがある. 本研究ではFRPMのディスク法と最小発育阻止濃度(MIC)の相関を求めた. また, 聖路加国際病院でのESBL産生腸内細菌科細菌による尿路感染症(UTI)に対してFRPMを使用した患者の臨床効果について検討した. 2020年1月1日から6月30日までに検出された第3世代セファロスポリン耐性大腸菌と肺炎桿菌の菌株を用い, 微量液体希釈法によりFRPMのMIC測定を行ってディスク法の結果との相関を求めた. 臨床情報は電子カルテから得て解析した. ESBL産生菌は44株, ESBL及びAmpC産生菌は4株, AmpC 産生菌は4株だった. ESBL産生菌37株のFRPMのMICは1mg/ L以下で, 2mg/Lが7株, MIC> 2 mg/Lが4株で認められた. FRPMで治療された尿路感染症は63症例認められ、FRPMで治療された全てのESBL産生大腸菌(n = 54)および肺炎桿菌 (n = 9)は, ディスク径16.0 mmから相関関係を求めるとMICは2.2 mg/Lとなった. FRPMで治療された患者の28日後と90日後の再燃率は, それぞれ16%と25%だった. 28日後および90日後の再燃に関する統計学的に有意な危険因子は認められなかったが, 再燃例では泌尿器科手術後や尿管ステント留置後などの患者が多かった. FRPMはUTIに対して, ディスク拡散法に基づく感受性に基づき安全に使用できることが明らかとなったが、ESBL産生腸内細菌科細菌に対するFRPMのclinical breakpointを評価するには, さらなる研究が必要と考えた.

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

臨床ではFRPMのMICを測定することが困難なことが多く, またbreakpointも存在しない. ESBL産生菌に対してのFRPMの感受性はディスク法で代用されていたが, 本研究でFRPMのMICとディスク径の相関関係を示すことができた. また, 求められた相関関係を用いて, 過去のFRPM使用例に対して後ろ向きでの解析を行なったが, ESBL産生菌による尿路感染症に対して経口抗菌薬であるFRPMの有効性を示すことができた. 今後は前向き研究での有効性の検討及びFRPMのclinical breakpointの設定が期待されるものと考える.