教室紹介
東京医科大学微生物学分野では、微生物学の枠にとらわれることなく、宿主-病原体-抗微生物薬の相互関係を意識した感染症の病態解明と新規治療法・予防法・診断法の創出を目指しています。基礎と臨床の垣根を超えたトランスレーショナル研究を推進し、微生物学・感染症学の発展に貢献します。
主任教授挨拶
当研究室は、大正5年 (1916年)に東京医学講習所として開校した際、古屋芳雄先生が初代教授として主宰された細菌学教室に端を発し、昭和46年に微生物学教室、平成26年に微生物学分野と名称変更され、令和元年7月に私が9代目の主任教授として着任させて頂きました。 医師、薬学系、理学系、臨床検査技師、獣医学系など様々な職種で構成されており、それぞれの特色を生かし、多方面から微生物およびそれらが引き起こす感染症を捉え、教育、研究、診療支援に取り組んでおります。
深刻な高齢化や易感染宿主の増加、薬剤耐性菌による難治性感染症の増加など感染症は多様化しています。その対応は喫緊の課題ですが、新薬開発は停滞し、感染症診療のブレークスルーが求められています。当研究室では抗菌薬のみに依存しない自然免疫賦活や病原因子制御による新しい感染症制御法の開発と臨床への応用、抗菌薬の適正使用に有用な新規診断法の確立や治療に関するエビデンスの創出を重点課題とし、世界に成果を発信できる独創的かつ先駆的な基礎研究を行っていきたいと考えています。また同時に、臨床に直結する研究 (一般検査室では同定できない菌株の菌種同定や強毒株の病原性解析、肺炎球菌の莢膜血清型解析、薬剤耐性遺伝子の分子疫学解析など)も重要と考え積極的に取り組んでいます。本学のみならず地域そして日本の感染症診療に貢献できる講座となることを目指し、研究を進めているところです。
また、高度な基礎研究の推進と医学教育による「良い医師」の育成は大学の使命であると考えます。また早い段階から基礎医学に触れることで身につく探究心と科学的思考力は優れた臨床医を形成する上で不可欠な要素です。私は卒前教育では、基礎医学的な微生物学の基本知識と微生物が引き起こす臨床感染症学を結びつけることで、より臨床に即した実践的な講義を心がけ、学生のみなさんが探究心を持って自ら学ぶ姿勢を養っていきたいと考えています。卒後教育では、「漫然とした抗微生物薬の投与」は公共益を損なう可能性があることを教育し、感染症診療の現状と将来を見据える視野の広さをもった医師を育成していきたいと思います。大学院教育においては、豊かな独創性と論理的思考力を養い、国内外の研究機関や研究者と円滑に連絡できるコミュニケーション能力を有する人材の育成を行いたいと思います。
最後になりましたが、私の目標とする理想の医師像は「基礎と臨床の二刀流」です。近年、医師の臨床志向が強まる中で、この目標を達成することは大変難しいことではありますが、たとえ研究の場、臨床の場に身をおいたとしても、常に双方向性の疑問を持ち、それを解決に導くリサーチマインドを持ち続けることこそが、今後の医学の発展にとって重要ではないかと考えております。
もし興味を持たれた方がおられましたら、お気軽に研究室を訪ねてください。
ご連絡をお待ちしています。
東京医科大学 微生物学分野
主任教授 中村茂樹