論文要旨
宮﨑治子准教授の論文が Epidemiology and Infection に掲載されました。
題名
Bacteriological characteristics and changes of Streptococcus pneumoniae serotype 35B after vaccine implementation in Japan
著者
東京医科大学微生物学分野 宮崎治子
掲載ジャーナル
Epidemiology and Infection 152 (2024) e114
DOI:10.1017/S0950268824001031
論文要旨
ワクチン普及後最も多く分離されるようになった肺炎球菌血清型35Bは付着因子 type 1 pilus(T1P)を高頻度に保有し、ペニシリン低感受性株が多い。35BにおけるT1Pの付着への関与を調べるためT1P陽性株を用いてT1P欠損株を作製し、ヒト肺胞上皮細胞への付着率を比較したところ、欠損株では有意に付着率が低下した。また、βラクタム薬への感受性を2014~17年と2018~22年の分離株で比較すると低感受性株の増加傾向が見られ、特にメロペネム耐性率は有意に増加していた。MLSTによる遺伝子型解析では、Clonal Complex 558が77.5%を占め、このクローンと2018年以降新たに10.0%にみられたSequence Type 156がT1P陽性かつβラクタム低感受性であった。血清型35Bの分離率増加にはT1P保有や薬剤低感受性などによる優位な定着性が関与している可能性が示唆された。
本論文の与えるインパクトや将来の見通し
肺炎球菌感染症は鼻咽腔に保菌された菌が肺や血中へ侵入することによって発症するため、非ワクチン株の中では定着に有利な菌が増加しやすいと考えられた。また、菌は定着性を高めている可能性がある。今後もワクチンの種類や制度が変ることによって臨床分離肺炎球菌の特徴も変化が予想され、血清型や薬剤感受性、遺伝子解析を継続することは、これからのワクチン対策や感染症予防を考えていくために有用と思われる。