東京医科大学 微生物学分野 - Department of Microbiology, Tokyo Medical University -

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論文要旨

犬飼達也助教の論文がJournal of Drug Delivery Science and Technologyに掲載されました。

題名

A Novel Fungal-Targeted Drug Delivery System Dectin-1-Targeted-PEG-Amino Acid Polymer Block Enhances Antifungal Activity and Reduces Cytotoxicity of Amphotericin B

邦題

新規真菌標的型ドラッグデリバリーシステムデクチン-1搭載ポリエチレングリコールポリアミノ酸ブロック共重合体がアムホテリシンBの細胞毒性を軽減し、抗真菌活性を増強させる

著者

東京医科大学微生物学分野 犬飼達也

掲載ジャーナル

Journal of Drug Delivery Science and Technology. 100 (2024) 106073.

論文要旨

 ポリエチレングリコール(PEG)-アミノ酸ブロック共重合体を基材としたデクチン-1(DEC)搭載高分子ミセルを用いて、抗真菌薬アムホテリシンB(AmB)の細胞毒性を軽減できるかどうかを検討した。高分子ミセルは、DECを搭載することにより菌体への蓄積性を獲得することが確認された。DECを搭載した高分子ミセルにAmBを担持させたDEC-AmB/mは、in vitroでDEC非搭載のAmBを担持させた高分子ミセルよりも高い抗真菌活性を示した。20μg/mLのAmBを培養細胞に投与すると、細胞内の乳酸脱水素酵素(LDH)の遊離が確認されるのに対して、DEC搭載高分子ミセルを用いることでLDHの遊離が抑制された。アスペルギルス感染カイコモデルを用いた治療効果の評価では、DEC-AmB/mを5μg/larva(アムホテリシンB換算)で投与すると、AmB 5μg/larva投与に比べてカイコの生存率が向上した。これらの結果は、薬剤を担持したミセルがAmBの臨床的有効性と安全性を改善する可能性を示唆し、ポリエチレングリコール(PEG)-アミノ酸ブロック共重合体のDEC修飾による真菌感染症に対する化合物デリバリーの可能性を強調するものである。

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

 本研究で開発した真菌標的型ドラックデリバリーシステム(DDS)の使用により、既存薬または新規抗真菌薬の有効性・安全性を向上させることができ、深在性真菌症の治療成績の改善が期待できる。さらにDDSデバイスは修飾の柔軟性を有していることから、今回搭載したデクチン-1分子を他の病原体抗原特異的分子に変更することで、真菌以外の病原体をターゲットとするDDSデバイスが創出でき、様々な感染症治療への応用が期待される。